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山岸涼子『日出処の天子』を読む

山岸涼子『日出処の天子』を読む_b0065128_22341530.jpg前々から気になっていたあの漫画を読みました。

学校の授業で、とある先生が連呼していたあの漫画。
その先生曰く、オリーブ少女はこういう漫画を当時は読んで興奮していた、というあの漫画(ホントか?)

山岸涼子の『日出処の天子』





以下、ウィキペディア参照。
厩戸皇子(うまやどのおうじ後の聖徳太子)の少年時代から、摂政になるまでを描く。白泉社の月刊少女マンガ雑誌『LaLa』に連載された。

聖徳太子には、一般に知られている話とは別に、「聖徳太子伝暦」などに残された、超能力を持っているとでもしなければ説明できない話が存在する。本作においては、こうした伝承、伝説を積極的に採用し、聖徳太子を天才かつ超能力の持ち主で、あまりの神童ぶりと超然とした態度から母親に怖れられて受け入れられず、一方で同性に懸想して思い悩むなど数々の欠点に苦しむという、斬新な聖徳太子像を描き出している。

話は、厩戸皇子と蘇我毛人(蘇我蝦夷)を中心に展開する。聖徳太子と毛人は、彼ら自身にもわからない理由で惹かれあい、この理由を問う形で話が発展していく。当時だったからこそ、描ける少女漫画なんだろうと思う。

というもの。
うん、確かに当時だったからこそ、描ける少女漫画なんだと思う。
この当時、他に萩尾望都や竹宮恵子などの少女漫画家も台頭してきたころで、少女が主人公だった時代から、主人公が少年になったSFだったり、古典だったり、同性愛を描いたりそういうことが少女漫画において描かれるようになった変化の時期なんだろうと思う。

なんというか、私は竹宮恵子の『風と木の詩』もとても好きなんですが、この作品はそれと比較してしまうと、いまいちうーん、と思うところもあるのです。

それは登場人物の魅力があまり感じられないのです…。
主人公の厩戸の皇子はすごく魅力的なんですが…。
簡潔に書くと、超能力者で、ゲイで、マザコン、で超美形(笑)
これがなんで魅力的なんじゃ!と言われそうなんだけれど、人間離れした自分自身でも、コントロールすることのできない感情に対して思い悩む皇子はとても人間臭くて、皇子を愛さずにはいられなくなる。そんな魅力があるんだと思う。

それに対して、相手役の毛人は…厩戸の皇子に比較してしまうと、どうしても見劣りしてしまうのです。毛人が想いを寄せる布都姫も「ただの女」にしか見えない。
でもそれがこの作品の狙いでもあるのかもなぁ。

いくら美しくても、魅力的でも「ただの女」にも敵う事ができないという皇子の無力さというものがあるのかもしれない。

ちなみにこの作品のラストは本当に悲しい。
涙を流さざるを得ないような果てしない孤独。
人はもともと一人なのである、そしてこれからも一人なのである。
でも無意識にでも何かにすがってしまう。
そういう弱さ、悲しさ、そういうものが描かれている。

それにしてもこの作品が20年以上も前に描かれたことにびっくりしてしまう。
当時この作品をリアルタイムに読んでいた中学生、高校生はこんなにも高尚であったのだろうか。

この時代の同性愛、というものは想像の中だけで描かれる楽しいものではない。
きちんと結末まで描かれる。
曖昧なままで終わったりしない。
必ず最後は訪れる。
終わりがあってその悲恋は美化され、心に強く残るものになるんだろう。

うーん、やっぱこの時代の漫画はすごいっす。
by rui-hadsuki | 2006-04-14 22:41 | books | Comments(0)
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