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よしながふみ『フラワーオブライフ』を読む

b0065128_15592669.jpg9月になりましたね。
また更新しますよ。
いつまで続くかね…。

さて、漫画を沢山読んだ中でよしながさんの作品をいくつか読みましたが、トータルで見るとこれが一番好きだなぁと思える作品でした。
というか今までよしながさんってなんとなく敬遠してたんです。
が、どの作品も面白いなぁ。
というかものすごく自分の好みにはまってるんだと思います。
自分のキャラクターに対する愛みたいなものを感じるのかなぁ。

よしながふみ『フラワーオブライフ』


というかよしながさんってすごく大人の人たちばかり描いているような印象があったので、学園ものをやるのか!そしてしかも群像劇なのか!ということろでかなり興味が引かれたところもありました。
本当にごく些細な、でも人と人との距離感って難しいよねという感じの
友情も恋も成長も…たくさんあるそんな青春の1ページ。
画像が4巻の表紙なのはこの表紙が一番好きだったので…。
ネタバレあります。
というか感想かなり長いです。




・日常の中に潜む非日常
ちょっとぽっちゃり系の漫画好きの翔太くん
いかにもヲタとしかいえない、というか突き抜けてる(でも見た目はそれなりにいい)真島
カマっぽいっていうか男にしか見えない担任教師、シゲ
眼鏡を取ると美少女というお決まりパターンの創作系(オタク)女子武田さん
他にもいろんな味のある、でもああ、これってふつーに周りを見回してみるといるなーというクラスメイト達が登場します。
その中ちょっと遅れて入学してきた花園春太郎。
彼は白血病を患って一年遅れて入学してきたという事実を転入の挨拶で明るく話したのだった。

というなんでしょうね。
「白血病」というと「不治の病」「大病」という一見普通の生活をしていると縁がなかなかなさそうなものが、彼らの生活の中に混ざりこんできます。
春太くんはそんないろいろと気を遣われるのがめんどうなので最初にぶっちゃけて
「あ、でも治ったから大丈夫です」
という感じでクラスへ溶け込みます。
でもやはりそれは「異質」なものとしてどこかで意識せずともそういった扱いを受けているのだ。

・この話の主軸は
 ①春太と翔太くんの友情&成長
 ②真島とシゲと小柳先生の三角関係の恋愛
 ③その他のクラスメイトたち
という感じの構成をなしているのかなと。

①は春太と翔太くんはごくごく普通に友情を深めていきます。
漫画が好きということでつながった二人は春太は絵が得意なので絵を描いて、翔太君はストーリー担当。
そしてその中で喧嘩したりしながら友情は深まってゆくし、二人で漫画を持ち込みしたり、コミティアで漫画を売ってみたり、人としても成長していくというごくごく王道のストーリーなのだけれど、普通ってなんて素晴らしいんだということが春太の今後の運命がどうなってゆくかということでより浮き彫りにされていくのかなと感じました。
私はこの二人が友情を育んでいく過程がすごく好きです。
この過程においてシゲがすごくいいハル太くんに言うんですね。
みんなに隠し事をしたくなかったからハル太は正直に病気のことを言っただけ。
でも、
「自分の言った事で相手が多少気を遣うだろうな、くらいの想像もできなかったとしたらあんたは馬鹿で無神経だわ」
そう、その通り。
子供の頃はそんなことを気にしなくても生きていけた。
だけど大人になればなるほど人と人との距離感のようなもの、相手が何を思い、考えているのかをなんとなく察してみたりすること。
そういったことを学んでいくんですよね。
だから相手のことを「わかりたいから」と全てをこじ開けようとするというのはなんというかそれは自分の欲求を満足させたいだけの無神経な行為だ。
うーん、ああ、わかるな。でも「わかりたいから」歩み寄ることをするなというのかといえば、そうはできない部分もあって、そういった「距離感」がすごく難しい。
最終的に春太郎は相手のことを考えて「秘密」をむやみやたらに打ち明けるのではなくて、「秘密」を持ち続けるということを学ぶのですが、それを無意識に感じ取った翔太は「大人になった」と評するんですね。
大人になるうちに自然に身につけてゆくんだろうなという「空気を読む」という行為。
それをリアルに感じる事ができるお話だなぁと思ったりしました。

②逆に普通ではない「特別」を目指した真島。
クラスの担任を手玉に取るような恋愛をして、どこか周りのクラスメイト達に比べての自分が特別だと心のどこかで優越感のようなものを感じていた真島。
周りのクラスメイトが同級生との恋愛に悩んでいたりとかそういうのを傍目で見ながら
「可愛い可愛いベタな青春を送る愚民どもめ」
と自分が「特別」であると思っていたりするんですね。
あああ、これもなんというか青春の発露には必ず付きまとうものなんだろうなとは思う。
が結局人間なんてそんな簡単にいくわけではなくて、シゲは小柳先生とよりを戻してしまうし、人間そんなに簡単じゃないということが思い知ったりするんですよね。
そしてその現場を目撃した春太郎に
「お前は自分を特別だと思ってるかもしれないけど、普通だ」
「オレはお前が羨ましい」
と春太郎は号泣。真島は訳がまったく分からないんだけど、多分春太郎の言った事の真意はわかったはず。
そしてそんな経験をしながら大人になってゆく。
この二人どうなっちゃうの、とは思いますが、多分この二人は別れるのかもしれないし、シゲの最後の想像のようにずるずるとまた関係が続くのかもしれない。
それは人間だから、わからないよね。というのはすごく感じたりしました。

③人との距離の取り方とか
他のクラスメート達もみんなそれぞれに個性的で、
自分の言った事がすごく場違いなことを言ってしまったんじゃないかと常にびくびくしていたりする相沢さん。
親の転勤が多くて、人一倍クラスの中でどう振る舞うべきかわかっている山根さん。(というかかなりデキた人)
山根さんと仲良くなりたい坂井さんはちょっとずぼらで適当なところがあったり。
私は坂井さんが山根さんに本を借りるエピソードがすごく好きで、
本を大切にしてるんだなというのは普段様子でわかっているんだけど、坂井さんは彼女に借りた本のページの端を故意ではないのだけれど折ってしまう。
返された時にそれに山根さんが気づくんだけど、確かに本を大事にしているからちょっと気に障るんだけど、それで人間関係をだめにするほどじゃない。というか坂井さんがそういう事が苦手な子なんだということもわかってたりするんですよね。
というかどんだけこの人達大人なんだろう…。
だけどそういことを気にするようになるのが高校生なんだよなと…。

そしてこの話に出てくるそれぞれがみんな「フラワーオブライフ(人生の最盛期)」であるんだな、そしてみんな大人になってゆくんだなと…。

最終回とかはこれからどんな風に変わってゆくのかとかこの後の話はわからない。
だけど、こんな青春の一ページみたいなものをみんな歩んでゆくんだなとじんわりと胸が熱くなりました。

・学生時代ってこんなだったなぁ。
うーん、なんだろうななんて言ったらいいんだろう。
表現するのが難しいんですが、私の高校時代もこんなだったよなーと思ったりするんです。
文化祭の劇とか、みんなで勉強会したりとかクリスマス会したりとか。
あー、なんか私の知ってる高校生活みたいなものがあるなぁというか。
私立の割と自由な校風の学校に行ってたからというのもあるのかもしれないですが、すごく学校の雰囲気自体が似てるんですよ。
春太郎や翔太や真島、武田さんみたいな文化部の端っこにいる人達って普通はいじめの対象になるもんなんですけどね、それがそうならない。
多分この学校、こう決めつけるのは嫌ですが、偏差値ある程度高い高校なんじゃないかと。
普通ヲタというのは運動部のやつらに駆逐されるもんなんだよな…。
私の学校も文化部がどちらかというと主流な感じの学校だったので、(理系の学校故なのかもしれないですが)映画撮ったりとか、漫画書いたりとか、アニメ作ったりとか。
私も高校生の時に友達と合同で漫画とか小説とか冊子作って配布したりしたよなぁとか、いろんなことがこの話の中にデジャブとして現れてくるんですよね。

さすがに先生とデキてしまったとかそういう話はなかったですがwww
なんだろうな、登場人物、こいつは人としてだめだなぁと思う人達もそれなりに登場するんです、特に真島、シゲ、小柳先生の三角関係なんかは読んでいてまったく受け付けない人もいると思うんですけど、だからこいつらだめみたいな感じの突き放した描かれ方がされない。
なんか登場人物みんなに作者からの愛があるなぁと感じてしまうんです。
そういう描き方が私は個人的に大好きなので、この作品が好きなんだと思うのです。
いやー、うん、結構何度も読み返してしまうお話です。

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高校時代、文化部が主流の学校にいた人なら是非読んでもらいたい。そんなお話でした。
by rui-hadsuki | 2012-09-05 16:03 | books | Comments(0)
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