浅野いにおさんの漫画も単行本になっているのはほぼ読んだんでしょうか。?
『虹ヶ原ホログラフ』です。 最強に暗い話です。 ですが、蝶の演出によって、リアルから離れた少し幻想的な演出にすることによって、どうにか読む事ができる、という印象を持ちました。 ・「11年前」という一言で始まる話。 浅野さんの作品全てに共通することして、主人公だけではなく、主人公にあまり直接的に関わらない人物も全てが同じ街の空気を共有している。 彼等は道ばたですれ違ったりするが、互いの事を知っているわけではない。 彼等一人一人の物語を読者である私たちだけが知っているというなんとなく気まずいような、でも覗いてみたい様なそんな気分にさせられます。 ・あまりにも暗いんで、あんまり内容の事には触れたくないんです。 これが正直な感想。 けれども最後の方に少しの希望を残しているんだろうか? それとも投げっぱなしな感じなんだろうか。 というか、私は無理矢理こじつけて何か希望を魅せるよりも、鬱屈した空気感だったり、現状をありのまま書くということも大事なんじゃないかと思うんで、特に投げっぱなしでもそういうやりかたもあると思うんで、いいとは思う。 ・ブリキの缶に詰まっていたのは希望? 鈴木くんの持っていたブリキの缶は一つだけ願いを叶えてくれるものが入っているもの。 なんだかパンドラの箱のようだとも思った。 10歳の彼はその箱を開けた。 そしてその先に続くのは真っ黒に塗りつぶされた見開き。 そして帰ってきた街で一筋の光を見る。 それはパンドラの箱の中に残された希望なんじゃないだろうか。 ・「世界の終わり」はどんななんだろうか。 光る蝶が増殖してゆく。 「素晴らしい世界」のラストの方で、精神と肉体が分かれてしまう正体不明の感染病が登場するが、それと似た様な形で蝶が増殖してゆく。 「肉体を捨てて魂だけの存在になる」という台詞はまさにその感染病と同じだ。 世界の終わりではなくてこの世界は永遠だから、こんな世の中にうんざりしている人々は蝶に姿を変えてこの世をずっと見続けてゆく。 なんだろう、この話に希望はあるんだろうか。 なんて思った時にまた「パンドラの箱」が登場する。 この話はどこかでループしているのか、それとも先に進んでいるのかが分からなくなる時があるけれど、最後におじいさんが子供にその箱を手渡して蝶となって消えた。 そして彼が消える前に言った 「たとえ世の中がどんなに不毛だとしても、強い意志を持ちなさい」 「君の人生の行く先は、君が決めていいんだよ…」 この一言がなければこの物語は救われないだろうと思う。 ・浅野さんの次回作に期待しています。 デビューから常に同じようなテーマで物語を書き続けていますが、私は浅野さんの描くまた違ったものを見てみたいと思ってます。 これまでのものが「リアルにより近いリアリティ」であって、彼の自叙伝的物語だとしたら、漫画家としての彼の引き出しはどのくらいあるんだろうと、羽海野チカさんに続いて次回作に注目してる漫画家さんです。 と、そんな感じで今月は浅野いにお月間という感じでした。 ・最近他に読んだ本 日渡早紀「ぼくの地球を守って」 幸村誠「プラネテス」 一色まこと「ピアノの森」 自分に合う合わないは別として、いろいろと考えさせられる部分は多かったです。 レビューもそのうちします。 ・これからの読書予定 山岸涼子「テレプシコーラ」 芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」 そんなこんなで最近は常に何か漫画読んでます。 →ちょっと暗い気分になってしまった私に励ましのクリック、ポチっとお願いします。
by rui-hadsuki
| 2007-06-18 03:09
| books
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